「この仇討つぞ」 --- 昭和十九年八月十三日 --- ◇“畜生!おぼえてろ”と思はず叫んだ。戦争になつてからけさ(十一日)の新聞ほど私をして憤らしめたものはなかつた。我が勇士の遺骸が、こんな姿で我々の目に触れやうとは夢想だもしなかつた。必ず、この仇討つぞ。 ◇こんな手合に人道だ、何だといつてもはじまらぬ。もう米英に関する限り、それこそ徹底的に報復を加へねば止まぬぞ。 ◇赤裸々にいつて、支那事変は不幸な出来事だといふ気がする。いや気がするどころではない。事実さうなのだ。我々は決して心底から中国人を憎んではゐない。戦つてゐても憎悪することはない。兄弟牆に鬩ぐをあらため、永遠に固く結ぶ日のやがて来るべきを信じて疑はない。 ◇支那事変もその本質は決して日華争ひではない。その背後に野獣のやうな牙をかくしてゐたこの米国との戦ひだつたのだ。我々の敵愾心の総ては、この極悪無道の米兵にのみ集中爆発させるべきだ。 ◇「米英と協力せざるものは、重慶側軍隊といへども敵にあらず」といふ我が方の声明はうそ偽りではない。大陸においても、ほんたうの敵は悪虐なる在支米軍であることを、日華両国ともに今こそはつきりと認識すべきだ。この非人道を破砕しない限り、東亜諸民族の解放はあり得ない。 ◇支那事変を速やかに処理し、全力、全憎悪を米国に向けよ。米兵に対してはもはやなんら仮借する必要はない。(六郎生寄) |